メッセージ:東京の児童養護施設で発生した事件の報道に接して

(※2019年2月27日:タイトルと本文、記事URLを修正し、事件があった児童養護施設の特定につながる情報を伏せさせていただきました。)

 報道によると、東京にある児童養護施設で、退所者(卒園生)が施設職員に危害を加え、施設長が亡くなるという痛ましい事件が発生しました。亡くなられた施設長の方のご冥福をお祈りいたします。
 今回の事件の詳しい背景や経緯は明らかになっていませんが、報道によると、逮捕された被疑者が「施設に対して恨みがあった。殺すつもりで刺した。誰でもよかった」と供述しているということです。

 私たちNPO法人ライツオン・チルドレンは、渋谷を拠点に、児童養護施設などで暮らす高校生や退所者に向けた支援を行うとともに、児童養護施設や「社会的養護」に関する理解促進の取り組みを行ってきました。今回の事件の背景や経緯は明らかになっていないものの、第一報に接した人々へ向けて、私たちのような団体からメッセージを出す必要があると考えました。以下に書いてあることを、今回の事件の報道を受けとめる際の一助としていただければ幸いです。

 児童養護施設は、虐待や経済的事情、親の病気などの理由で親と一緒に暮らせない子どもを預かり、養育する施設です。子どもが親と再び一緒に生活できるように、職員は家族や親族とも相談を重ねますが、一定の年齢(原則18歳)になると施設を退所しなければなりません。
 施設を退所した後、一人で生活をしていて、人間関係や仕事で壁にぶつかり生活に行き詰まるケースが多かったことから、現在では児童養護施設が退所後の相談などの「アフターケア」に取り組むことになっています。退所者が気軽に訪れ、相談ができる場所になろうと施設が努力をしている中で、今回の事件が起きてしまいました。
 児童養護施設を退所した人に向けた相談窓口や居場所作りの取り組みは、児童養護施設や「自立援助ホーム」のほか、私たちのような非営利法人や当事者団体などが行っています。相談機関の方々や退所者の周囲にいる一般の方々が、今回の事件によって動揺せず、引き続き退所者の相談に乗り、寄り添いながら、効果的な対応策を一緒に考えていくことが大切だと思います。

 一方、今回の事件により、児童養護施設のこと、そこで暮らす子どもたちのこと、退所者たちが置かれている状況に対して、世間の関心が高まることが予想されます。今回の事件が、児童養護施設や退所者に対する偏見を助長するのではなく、理解を深める方向に進むことを願います。私たちは引き続き、児童養護施設等に協力をお願いしながら、「社会で子育てドットコム」などを通じた情報発信に取り組んで参ります。
 事件が起きた施設を含め、児童養護施設は子どもたちの生活の場であり、頼れる親族等がいない子どもにとっては実質的な「実家」となるべき場所です。児童養護施設で事件があった時、その背景を取材し報道することは大切ですが、取材活動が子ども達に与える影響を十分考慮されるよう、報道機関やライターなどの皆さまにお願い申し上げます。

2019年2月25日
特定非営利活動法人ライツオン・チルドレン
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